『ビートたけしと北野武』近藤正高 著 講談社現代新書

本の紹介

ビートたけしと北野武 (講談社現代新書) Amazon

ビートたけしと北野武 (講談社現代新書) [ 近藤 正高 ] 楽天市場

この本は、ビートたけしが出演してきた実際に起きた犯罪や事件を扱ったテレビドラマやその事件そのものについて論じながら、ビートたけしの生い立ちや考え方などに触れていくという内容になっています。また、同時にこれらの事件やビートたけしから見える一つの昭和史の本と言っても良いかと思います。タイトルの通りビートたけしと北野武という彼の中の二面性についても触れられています。(個人的にはタイトルと内容が若干ズレているかな、とは思いました。でも内容は面白いです!)

結論から言うととても興味深く、非常に面白い内容が多かったです。

僕にとってもビートたけし、北野武は物心ついた頃からテレビのスーパースターでしたし、監督された映画にも影響を受けてきました。

ビートたけしがこれまで演じてきた犯罪者や事件は、この本で特に紙面を割いて触れられているものは以下のものです。(Wikipediaのリンクを貼ったので、興味のあるものはそれぞれご覧ください)

・大久保清 大久保清 – Wikipedia

『昭和四十六年、大久保清の犯罪』(TBS 1983年)

1971年、父親から買い与えられた車で画家や教師になりすまし、127人の女性に声をかけ、35人を車に連れ込み、8人を殺害…。

・金嬉老(きんきろう(キム・ヒロ) 金嬉老事件 – Wikipedia

『実録犯罪史 金(キム)の戦争』(フジテレビ 1991年)

1968年、在日韓国人二世の金嬉老が暴力団員2名を射殺した後に旅館に籠城(ろうじょう)。旅館経営者家族と宿泊客を人質にした事件。籠城しながら電話でワイドショーに出演するなど、”劇場型犯罪”のはしりともされるそうです。

・三億円事件犯人 三億円事件 – Wikipedia

『三億円事件 ー 20世紀最後の謎』(フジテレビ 2000年)

1968年、東京芝浦電気府中工場の従業員のボーナスおよそ3億円を乗せた現金輸送車が、白バイ警察官を装った男に奪い取られ、3億円も強奪されたまま、今日に至るまで解決を見ていな事件。事件の真相が不明なため、逆に想像力をかきたてられた多くのクリエイターによって作品が作られ続けています。

・鉄工所経営者 豊田商事会長刺殺事件 – Wikipedia

『コミック雑誌なんかいらない!』(映画作品 1986年)

金融詐欺を行い、多額のお金をだまし取っていた豊田商事の会長永野一男が、報道陣の見守る中部屋に押し入った鉄工所の経営者らによって刺殺された事件。たけしは鉄工所の経営者を演じています。

・千石剛賢(せんごくたけよし) イエスの方舟事件 – Wikipedia

『イエスの方舟 ー イエスと呼ばれた男と19人の女たち』(TBS 1985年)

東京の国分寺で「極東キリスト教会」を結成し、共同生活しながら聖書の研究をしていた千石たち(ビートたけしが演ずる)。増えていく会員たちの中には家出をしてきた若い女性たちもいて、取り戻そうとする家族たちとの対立が深まり、教団は全国を放浪するようになり…。

・輸血拒否事件の父 エホバの証人輸血拒否事件 – Wikipedia

『説得 エホバの証人と輸血拒否事件』(TBS 1993年)

1985年、川崎市でダンプカーと接触する事故にあった小五の男子が病院に運ばれるが、エホバの証人の信者であった両親の承諾が得られず輸血ができなかったために出血多量で亡くなってしまった事件。

このドラマ、おそらく高校生の頃僕も見た記憶があります。また、高校の頃、ものすごく気さくでまた、勉強も良くできるクラスメートがいましたが、彼はエホバの証人の信者でした。教義に反するとかで柔道の授業には出ていませんでした。

エホバの証人に関しては、↓の書籍を以前読んだことがあって、とても面白く読んだことを思い出しました。

カルト脱出記 エホバの証人元信者が語る25年間の記録 (河出文庫) [ 佐藤 典雅 ] 楽天市場

カルト脱出記: エホバの証人元信者が語る25年間の記録 (河出文庫) Amazon

それぞれの事件や犯罪についてはここで詳しく書きませんが、なんとなく知っていたものから、ほとんど知らなかったものまでいろいろありました。戦後の犯罪史は興味深いものが多く、一つ一つ関連書籍を読んでみたい気持ちにもなりました。

ビートたけし自身の昭和史とその考え方

本書は上記のような事件や犯罪の当事者をビートたけしが演じてきた背景や演じた対象と彼自身の類似点や相違点、彼の考え方などが様々に紹介されています。

すべてを紹介するつもりはありませんが、ひとつ、僕が特に印象に残った、差別に関するビートたけしの考え方がありました。本書に引用されている宝島30からの引用を孫引きします。

「差別はいけない、平等に」とか言ってちゃ絶対平等にならない。だってやっぱり差があるんだから。差別された人間は、差別する側より上に立たなきゃ絶対にバランスはとれない。戦わなきゃ絶対にダメ。(中略)最低限、喧嘩できないとね。おたがい弱みを言いあいながら。「オレは『いざり』だけど文句あるか」って言い返すとかさ。その喧嘩ができないうちは、いつまでたっても差別はなくならないよね。暖かいこととか、やさしさってのとかが、本当はいちばん残酷なんだってことは、気がつかないうちはさ。(『宝島30』1993年6月号)

本書:P70

この指摘は、胸に響きました。目ざわりの良い、耳ざわりの良いことを言ってみても、差別される人からしたらそれはただの偽善であって、結果的には無視されていたり、ないがしろにされているのと同じ意味なんだ、と言うことだと思います。自分の行動や考え方も見直すきっかけにしたいと思いました。

この本は歴史の教科書には載らない、本当の昭和史の一端を垣間見ることができるという点で、僕にとっては大変面白かったです。また、70歳を超える高齢になってきたと言っても、まさしく現在に至るまでスーパースターであり続けるビートたけしの考え方に改めて触れることができるのもおすすめしたいポイントです。良かったら是非、手に取ってみて頂けたらと思います。

ビートたけしと北野武 (講談社現代新書) Amazon

ビートたけしと北野武 (講談社現代新書) [ 近藤 正高 ] 楽天市場

この本は、同じ著者による『タモリと戦後ニッポン』の続編にあたる本とのことで、こちらもチェックしてみたいと思いました。

タモリと戦後ニッポン (講談社現代新書)Amazon

タモリと戦後ニッポン (講談社現代新書) [ 近藤 正高 ]楽天市場

コメント

タイトルとURLをコピーしました