『世界一しあわせなフィンランド人は、幸福を追い求めない』フランク・マルテラ 著、夏目大 訳 ハーパーコリンズ・ジャパン出版

本の紹介

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本書を手に取った時、なんとなく

「フィンランド人のスローライフ的な生活を解説した本なのかな」

と思ったのですが、全然違いました(笑)

ただ、それはうれしい誤解でした。僕が本当に読みたい内容が書いてあったからです。

著者のフランク・マルテラさんはフィンランド出身の哲学者・心理学研究者とのことですが、この本は、人はなぜ生きるのか?人生に意味はあるのだろうか?幸福ってなんだろう?ということを真面目に考える内容になっています。そして、最後には幸せに生きるためのヒントが提示されます。

昔は、人生にはあらかじめ意味があった

現代に生きる我々は、ふと「人生の意味」について考えた時に、悩み、答えを見つけることができずに鬱になったり自殺してしまう場合もあります。人間は「生まれつき意味を求める生き物」なのだそうです。だからそこに答えを見いだせなければ行き詰まってしまう。

現代の大多数の人間は、「人はなぜ生きるのか?」という問題に明確な答えを持てなくなっていますが、

実は、過去にはそうではなかった。かつてはどの文明にも確かな枠組みがあり、「生きる意味とはなにか」という人生における最大の問いへの答えもあらかじめ用意されていた。「自分の人生をどう生きるべきか」という疑問が浮かんでも、社会がその疑問に答えてくれた。社会の揺らぐことのない習慣、信仰、制度などが人を導いた。

本書:P7

僕たちは既に疑問を差し挟む余地のないような宗教や社会的な枠組みなどを失ってしまっています

かつて、地球が宇宙も含めた世界の中心である、という考え方があって、人間はビッグバンから始まる宇宙の歴史の中では人間の存在など取るに足らないものだ(宇宙の歴史が24時間だとすると、人類の歴史は午後11時59分45秒頃にはじまる)と思うこともなく、宇宙の果てだとか宇宙の終わりだとかそんなことには思いを巡らせなくてもよかった時代があったのです。目に入る村やせいぜい隣村くらいまでがその人の世界で、それ以上の世界は無いも同然。その世界では等身大の自分をそのまま感じることができたのかもしれません。

どんなにそういった昔の世界が羨ましい、と思っても我々は科学技術の発展などによって、そのような時代にはもう戻れません。

幸福を追い求める現代人

かつては神などの超越的な存在があることで、あえて幸福を考えることもなく、与えられた人生の目的を信じて生きていくことができた、と書かれています。

しかし、現代ではそういった信じられる対象が失われてしまい、その隙間を埋めるように”幸福”が登場したのだと言います。現代人のテーマは、”幸福になること”になった。

でも、幸福ということを意識するがあまり、幸福ではない状態=不幸、と言うことになってしまいます。それが現代人の悩みの源泉なのかもしれません。

幸福ってなんだろう

この本のタイトルにもあるフィンランドでの2019年の生活満足度をベースにした幸福度調査では、福祉が充実したフィンランドは156か国中の1位だったそうです。ただ、感情面での幸福度調査では、フィンランドの順位はかなり下がるそうです(この調査ではグアテマラやパラグアイ、コスタリカといった新興国が上位に入るそうです)。フィンランドはうつ病の罹患率も高いそうです。

生活が豊かなだけでは人間は幸福にはなれない、のです。

幸福になれない原因の一つは、「人生に意味が見いだせない」ことです。

人生に意味を見出すことができれば人間は幸福を感じることができる。

2つの人生の意味

著者は、人生の意味、には2種類あると言います。

一つは、「普遍的な人生の意味」

これは、誰にでもあてはまる、世界の法則のような意味で、宗教や神や宇宙といったものがこれに当てはまるそうです。

ただ、既に述べたようにこういった人生の意味を多くの現代人は信じられなくなっています。

宗教や神の神秘も、地球を中心とした素朴な世界観の宇宙も全て科学や文明の発達によって白日の下にさらされてしまったから…。

では、人生に意味を感じるのは不可能なのか?というと、もう一つの意味がそれを助けてくれます。

それが「個人的な人生の意味」だと言います。

人生の意味は自分の心の中に生じるもので、自分の外にはない。人生の意味は、優しさや思いやりなどと同じように、自然に心の中に生まれる。自分のことを客観的に見る必要などなく、ただ、自分の心を見つめればいい。これまで生きてきて、自分はどういうときに人生に意味を感じられたかを自問するのだ。

本書:P119

たしかに、この考えには僕も共感します。ついつい我々は「人生の意味ってなんだろう?」などと大上段に構えて大きな普遍的な意味を求めてしまいますが、『青い鳥』のように人生の意味は自分の中や身の回りの世界に既に存在しているのだ、と気づければ、その人は既に人生に意味を見出し、幸せになれるのではないか、と思います。

心理的な欲求

僕たちが人生に意味を感じられる状態であるためには、心理的な欲求が満たされる必要があると書かれています。心理的な欲求には下のような3種類のものがあるそうです。

・自立への欲求ーーー自分自身の人生の作者になりたいという欲求

・能力への欲求ーーー自分の能力に自信を持ちたいという欲求

・関係への欲求ーーー他人とのつながりを持ちたい、他人を世話したい、他人に世話されたい、という欲求

とあります。

著者は、これに加えて第4の欲求を提示しています。

慈善への欲求

それが、慈善への欲求です。

大小を問わず、自分が重要な存在だと感じられれば、私たちは人生に意味を見出せる。

(中略)

慈善の行為によって、人間が幸福感と人生の意味を感じることは確かだ。

本書:P143

この指摘は確かにわかるなあ、と思わせられます。

例えば電車で席を譲る程度のちょっとしたことでも、僕たちは誰かに何か良いことをしてあげられた時には心が浄化されたような、満たされたような気分になります。

多くの人が、「人のためになる仕事をしたい」と思うことがあると思います。僕もその一人です。僕は医療系の営業の仕事をしていますが、この仕事についた頃は「この仕事はまわりまわって病気を治したい患者さんのためになっているんだ」と思っていましたし、いまでもたまにそう思います。

でも、やはりそういう初心を普段はほとんど忘れていて、仕事に不満を持ったりつらくなったりすることが多いです。

これを機会にそれを再認識したいな、と思いました。また、

もちろん、仕事以外にも貢献の手段はある。ボランティア活動や寄付もできるし、友人や親戚を助けるのでもいい。近隣の活動に参加してもいいだろう。自分が賛同する政治的な運動を支援するという方法もある。決して難しいことをする必要はない。

本書:P180

とも書かれています。

僕たちが人生に意味を感じ、幸福を感じることのできる機会は案外いろんなところにあるのかも、と思いました。

他者とつながることと自分とつながること

上で語られている4つの欲求について、著者は別の言葉でも言い換えています。

人生を意味あるものにする方法は1つではない。ただ、総じて言えば、その方法は主に2つだろう。1つは他者とつながること。もう1つは自分自身とつながることだ。自分自身とつながるとは、自分らしく生き、能力を高めることである。他者とつながるとは、他社と緊密な関係を築き、その人に良い貢献をすることだ。

本書:P208

これもとても大事な指摘だなあ、と思いました。

自分のことばかりでも人は幸せになれない。

また、他人に奉仕するだけでも幸せにはなれない。

自分も他人もどちらも大事にすることが幸せへの道なのだと思いました。

まとめ

この本では、現代人の多くが見失ってしまっている幸福感を得るための具体的なヒントが多く書かれていると思いました。

自分の心の声に正直に、自分を常に高めていけるように努力しながら、一方で人と関わり、その人たちへ何かの貢献ができないだろうか、と常に考えて実行していくこと。

それが僕がこの本から学んだ幸福への道です。

皆さんはどのように思われますか?

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