人を動かす 文庫版 Amazon
『人を動かす』を少しずつ読んで紹介しています。今回で最後になります。
人を変える九原則
最後の4パート目は 「人を変える九原則 」です。
① まずほめる。
② 遠回しに注意を与える。
③ 自分の過ちを話す~まず自分の誤りを話したあと相手に注意する。
④ 命令をしない~命令をせず、意見を求める。
⑤ 顔をつぶさない。
⑥ わずかなことでもほめる~わずかなことでも惜しみなく心からほめる。
⑦ 期待をかける。
⑧ 激励する~激励して、能力に自信を持たせる。
⑨ 喜んで協力させる。
① まずほめる。
カーネギーの友人がクーリッジ大統領(1923-1929在職)を訪ねた時、大統領が秘書の女性をほめていたそうです。服装をほめ、彼女が美人だとほめた。照れる彼女に大統領は文章を書く時の句読点に注意してほしいね。と申し添えたそうです。
彼のやり方は少し露骨だったかもしれないが、人間の心理に対する理解の程度はほめてよい。我々は、ほめられたあとでは、苦言もたいして苦く感じないものだ。
本書:P260
この章ではほかにも多くの例が挙げられて、こちらの批判や本当に言いたいことは後回しにして、まずは相手をほめよう、と繰り返し語られています。人間は誰でもいきなり批判めいたことを言われるのは好きではないし、心に届かないのだと思います。多少手間に思われても、結局はまずほめる、というステップを踏んだ方が物事がうまく行き、あとあと心のしこりを生まないのかもしれません。
もちろん、これもうわべの気持ちや言葉では相手に見抜かれてしまうので、本当に、心からほめなければいけないのだと思います。
同様のことがパート2でも書かれていました。この本では重要に思われることは何度も形を変えて語られなおしている、という感じがします。
『人を動かす 』D・カーネギー 著 山口博 訳 創元社 その3(パート2 人に好かれる六原則のうちの4~6) | 雨の星 探検記 (amenohoshi.com)
② 遠回しに注意を与える。
さきほどの「まずほめる」のつづきのような感じですが、なにか注意を伝えたいときには直接的に言ってはいけないよ、という内容です。
ある女性が家の建て増しを職人に頼んでいたのですが、職人たちは最初の2~3日は後片付けをせずに散らかったまま帰ってしまいます。苦情を伝えたかった女性は、直接何か言う代わりに子供たちと木屑などを集めて綺麗にしたうえで、翌日現場監督に「昨日はしっかり片づけをしてくれて近隣からの苦情もなくとても喜んでいる」と伝えたそうです。すると、職人たちは翌日からちゃんと片づけをしてくれるようになった、と書かれています。
この手法は相手にそういった遠回しな表現を受け止めるアンテナがある場合に限り有効なのかな、とも思いますが、一定の割合の人は気づいてくれそうです。
ついつい直接的にガツン、と言ってしまいがちなので、僕も見習いたいです。
③ 自分の過ちを話す~まず自分の誤りを話したあと相手に注意する。
カーネギーの姪がカーネギーの秘書の仕事についたところ、へまばかりしていたそうです。カーネギーはそれをただ批判するのではなく、まず自分は姪と同じ年頃の時にはもっとへまばかりしてダメダメだったということを前置きしたうえで、「こうしたらどうだろう」と本当に伝えたいことを伝えたそうです。その結果彼女は後年優秀な秘書になったそうです。
たしかに、いかに優秀な人からでも、高いところから見下ろすように頭ごなしに正論を言われても心に響かないし反発心の方は多くなってしまう、ということはあると思います。
だからさきほどの例のように相手と同じ目線のところにまで自分が下りて行って、同じ目線で注意するということが大事なんだろうな、と思いました。
実際、僕にしたって若い頃は本当に使い物にならないダメな奴だったな、と思ってしまいます(いまだってそう変わらないかも)…。そう思ったら若い人を偉そうに批判するのは天に唾を吐くようなものです。
④ 命令をしない~命令をせず、意見を求める。
オーウェンヤング(オーウェン・D・ヤング(Owen D. Young、1874年10月27日 – 1962年7月11日)は、アメリカ合衆国の財政家、法律家、外交官。ニューヨーク州ハーキマー郡スターク出身。wikipedia)は、命令的なことを言わなかったと書かれています。
命令ではなく、暗示を与えるのだ。「あれをせよ」「そうしてはいけない」などとは決して言わなかった。「こう考えたらどうだろう」「これでうまくいくだろうか」などといった具合に相手の意見を求めた。手紙を口述して書かせたあと、彼は「これでどう思うかね」と尋ねていた。彼の部下が書いた手紙に目を通して「ここのところは、こういう言い方をすれば、もっとよくなるかもしれないが、どうだろう」と言うこともよくあった。~中略~
こういうやり方をすると、相手は自分の過ちが直しやすくなる。また、相手の自尊心を傷つけず、重要感を与えてやることにもなり、反感の代わりに協力の気持ちを起こさせる。
本書:P279
たしかに、こういう言い方をされると素直に話を聞く気になるし、何かあったら協力したくなりそうです。こんな上司ばかりだと良いですね。僕も同僚や家族と接するときにはこんな態度でいられるようにしたいです。
⑤ 顔をつぶさない。
この章では、優秀だけれどある役職には不適任な人へ異動を伝え方や、しかたなく解雇を言い渡すときにどのように伝えるか、ミスをした社員をどのようにやる気にさせるか、といったことが書かれています。どれも、その人の自尊心を傷つけずに、顔をつぶさずにどのようにするか、といったことです。
サンテグジュペリは以下のように書いているそうです。
相手の自己評価を傷つけ、自己嫌悪におちいらせるようなことを言ったり、したりする権利は私にはない。大切なことは、相手を私がどう評価するかではなくて、相手が自分自身をどう評価するかである。相手の人間としての尊厳を傷つけることは犯罪なのだ。
本書:P287
残念ながらこういったことを心において行動、発言している人は少ないと思います。僕もその一人です。そういった言動はきっと自分に返ってくるのだと思いますから、気をつけたいと思います。
⑥ わずかなことでもほめる~わずかなことでも惜しみなく心からほめる。
ほめるシリーズふたたび(笑)。でも、それだけ大事なことなんでしょうね。
人間関係を良くしたり、子育てをするうえで子供の問題行動を抑えたり、誰かの能力を伸ばすためにも、ほめる、ということが大事だよ、と書かれています。
ただ、これも繰り返し述べられているように、うわべだけの言葉ではダメなんだ、と書かれています。
重ねて言う。本書の原則は、それが心の底から出る場合に限って効果を上げる。小手先の社口述を説いているのではない。新しい人生の在り方を述べているのである。
本書:P293
僕らの(僕の)中には、人をほめるということに対する心理的なブロックがかかっているような気がします。誰かと話していて、接していて、「この人のここ良いなあ」と思うことは時々あります。でも、毎回ほめないですよね。なんでだろう。ほめることに気恥ずかしさがあるのかもしれないです。これからはガンガンほめていけたらと思います。だって、ほめて損することはないし、ほめられて嫌な気分になる人はいないですよね。
また、同時に人の良いところをもっと見つけるセンサーを身につけたいとも思います。
⑦ 期待をかける。
これは、ほめる、に似ていますが、もしその人にほめるべきところが無くても、あたかもその人にほめるべき点があるように言い、期待をかける。そうするとその人はそうあるように努力をする、ということです。
要するに、相手をある点について矯正したいと思えば、その点について彼は既に人よりも長じていると言ってやることだ。「徳はなくても、とくあるごとくふるまえ」とはシェイクスピアの言葉だ。相手に美点を発揮させたければ、彼がその美点を備えていることにして、公然とそのように扱ってやるがよい。良い評判を立ててやると、その人間はあなたの期待を裏切らないように努めるだろう。
本書:P296
これは感覚的によくわかる気がします。人間は言葉にしばられるということでもあるかもしれません。「お前はダメな奴だ」と言われれば、そのような自己認識に基づいて行動するようになってしまうし、逆に「君は晴らしい人だね」と言われればそのような自分であろうとするのだと思います。
⑧ 激励する~激励して、能力に自信を持たせる。
子供や夫や従業員を、馬鹿だとか、能なしだとか、才能がないと言ってののしるのは、向上心の芽を摘み取ってしまうことになる。その逆を行くのだ。大いに元気づけて、やりさえすれば容易にやれると思い込ませ、そして、相手の能力をこちらは信じているのだと知らせてやるのだ。そうすれば相手は、自分の優秀さを示そうと懸命に頑張る。
本書:P303
これも、ほめたり期待をかける、ということの合わせ技のような感じですが、大事なことだなあ、と思います。
子供たちにたいして、このような接し方をしていきたいと思います。実際やろうとすると難しいのですが…。
⑨ 喜んで協力させる。
最後の章ですが、誰かに協力をしてもらいたいときには以下のようなことに気をつけよう、と書いてあります。
一、誠実であれ。守れない約束はするな。自分の利益は忘れ、相手の利益だけを考えよ。
二、相手に期待する協力は何か、明確に把握せよ。
三、相手の身になれ。相手の真の望みは何か?
四、あなたに協力すれば相手にどんな利益があるか?
五、望み通りの利益を相手に与えよ。
六、人に物を頼む場合、その頼みが相手の利益にもなると気づくように話せ。
本書:P312
仕事上でも、普段の生活でも、お互いの利益になるような一致点を見出していく、というのはとても重要なことなんだろうな、と思います。
まとめ
ここまで7回にわたって『人を動かす』について紹介してきましたが、もし興味を持たれたら是非実際に本を読んでいただきたいと思います。
この本には自分の人生や周囲の人々を変える(もちろん良い方向に)ヒントがたくさん詰まっています。
僕も繰り返しこの本に立ち戻って、少しでも身につけられるようにしていきたいと思います!
コメント