『ビートルズとストレスマネジメント』松生恒夫 著 春陽堂書店

健康

この本は、消化器内科のお医者さんである松生(まついけ)先生が、ビートルズのメンバーたちがビートルズ時代やその後のソロの時代を通じて、ストレスフルな人生をどのように切り抜けてきたのか、どのように対処したのか、といったことを紹介してくれる内容です。

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松生先生は、これまでも『ビートルズでおなかスッキリ』、『ビートルズの食卓』といったビートルズに関する本を書かれてきたそうで、相当なビートルマニアのようです。(ビートルズに関連しない健康系の本もたくさん書かれているみたいです。)

個人的には、7つ年上の兄がビートルズのファンでレコードを集めていたので、僕も小さな頃からビートルズの曲にはそれなりに馴染んできました。

ジョンレノンの人生を描いた1988年制作のドキュメンタリー映画Imagineなどで、ビートルズやジョンレノンのことをなんとなく知っているつもりになっていましたが、こういった本を読むと知らないことも多く、改めて新鮮で勉強になりましたし、この本のテーマであるストレスマネジメントの方法も自分の生活や人生に参考になりそうです。

下積み時代のビートルズ

ビートルズが正式にデビューする前に、ドイツのハンブルクでへ出稼ぎ巡業に出ていた頃があるそうです。そういえば、当時の彼らの様子は、5番目のビートルズと言われたスチュワートサトクリフを描いた映画『バックビート』で見た記憶があります。バックビート [DVD] 

ハンブルクでは、劣悪な環境の中、一日に何度もステージに立たなくてはならず、相当なストレスにさらされただろうと書かれていますが、こういったストレスに耐えた彼らは「チャレンジ反応」で乗り越えたのだろう、と言います。ストレスというのは一概に悪いものでもなく、「よいストレス・わるいストレス」があるのだそうです。これはつまり、ストレス自体には色がついていないのですが、それを受け取る人や状況によって、ストレスは良い方向にも悪い方向にも向かう、ということです。下積み時代のビートルズはこのストレスを良い方向へ変える力があった、と言うことかと思います。

ビートルズのコンサート漬けの日々と、コロナ禍の我々

1966年8月当時の全米ツアーの日程が最初の方に紹介されているのですが、まさに過密!というべきものです。毎日毎日1~2回のコンサートがあるだけでなく、飛行機の移動と、移動してもホテルに泊まってもまた別のコンサート会場へ行くだけといった生活で、松生先生はこういった当時のビートルズの状況を、我々が現在コロナで経験するロックダウンにも似ていると書かれています。彼らが受けたストレスは決してスターのみの特殊なものではなく、新型コロナでなにかと行動を規制されるいまの我々にも通じるところがあるのかもしれません。

大きな影響を与えたインド瞑想・菜食主義

1966年のストレスフルな日々の中で、彼らはインドに出会っています。

最初にインドにはまったのはジョージで、彼のインドとのつながりは生涯にわたったようです。(ちなみに、ジョージのインド音楽の師匠であるラヴィ・シャンカールは、著名な女性ジャズヴォーカリストであるノラ・ジョーンズのお父さんだそうです。)また、他のメンバーもジョージに影響されて1968年にインドに訪問して瞑想の世界に強く影響されています。(以前、書いたブログにもあるように、歌手のDonovanなども一緒に行っています。Donovan ”Happiness Runs”  和訳カバー | 雨の星 探検記 (amenohoshi.com))また、このインド瞑想の体験によってジョンの”Across the Universe”などたくさんの名曲が生まれています。

1970年にバンドが解散したあとも、もちろん、ビートルズの解散だけではなくその後の音楽人生でうまく行かない時期もあったり、ドラッグに溺れたり、恋愛関係でのもつれもあったりなど様々なことで山あり谷ありの人生を送った(送ってきた)彼らですから、平坦ではなかったようですが、人生の折々で瞑想や菜食主義がジョンやポールの救いになった、といったことも書かれています。

また、この本ではポールの作品である”Let it be”と日本の精神療法である「森田療法」との類似性についても触れられています。”Let it be”は「あるがままに」という意味ですし、「森田療法」は「あるがままに生きる」、「あるがままの自分を受け入れる」といった考えを根本的な思想としているそうです。「あるがままに受け入れる、そのままを見つめる」というのはマインドフルネス瞑想の考え方にも似ています。

ジョンやポールはインドとの関連で菜食主義に触れていたようですが、後年再度菜食主義になったのは、それぞれがオノヨーコに出会ったり、リンダに出会ったりと、それぞれのパートナーからの影響と言うのも大変大きかったようです。

ジョンの曲でMotherという、母や父との満たされなかった関係を歌った歌があるのですが、この曲はプライマルスクリームという心理療法を受けることによって生まれたそうです。それまでのジョンは幼いころのトラウマに蓋をして生きていたらしいのですが、このトラウマを見つめ、開放する療法によって、彼は救われ、名曲が生まれた、というのも非常に興味深かったです。

本書には、そのほかにも様々なビートルズ雑学的な興味を満たしてくれる側面と、人生に取り入れることが出来そうな健康方法や考え方などが多く紹介されており、とても面白く読みました。

完全な菜食主義になるのは少しハードルが高いですが、菜食に準じるような食事や考え方は今も少しずつ取り入れていますし、マインドフルネスや習慣になってきているヨガなども人生の中で大事な役割を果たしてくれそうです。僕としてはそういった思いを新たにしました。

よかったら、あなたも手に取って頂けたら嬉しいです。

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