小池龍之介さんという1978年生まれで東大卒のお坊さん(ご存知の方も多いですかね?)と、テレビでおなじみのテリー伊藤氏の対談本。(2019年の小池さんの還俗については最後の方に触れました)
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煩悩まみれのテリー伊藤がさまざまな疑問を投げかけて小池さんが回答したり一緒に考えたりする、という感じの本です。
印象に残ったポイントをいくつか書いていきたいと思います。
煩悩を「捨てる」?
仏教では、煩悩がすべての苦しみの根幹であるとされています。かといって「煩悩を捨てたい!」と肩に力が入った感じで思う感情こそが煩悩である、と小池さんは言います。「煩悩を捨てたい、減らしたい」という意識は、自然に「煩悩がある自分はダメだ」という自己否定のスタンスになってしまい、それでは人間の心は変えられないそうです。たしかに、自己否定からはあまり良い方向にはいかなさそうですね。
その代わりに、「自分にはこういった煩悩があるんだなあ」とか「欠点があるんだなあ」といった感じでゆるやかに柔らかく自分自身をただただ見つめることによって少しずつ自然に心が変わっていくのだと言います。
いざ実践してしようと思うと難しそうですが、試してみる価値はあるかもしれません。
ちょっとずれますが、子育ても似たようなところがあるかもしれないなあ、と思いました。「お前のここがダメだ」とか「こうしなきゃいけない」と言うのは子供に対する否定であって、柔らかく見つめていくような姿勢が本当は大事なんだろうな、と。あ、またここでそんな僕の今までの子育てはいけない!と思ってしまうと自己否定につながるから…。柔らかく優しく自分の子育てのクセみたいなものを見つめていきます。(笑)
健康を目指しすぎると不健康になる!?
「もっと今以上に健康になりたい」と強く思っていろんな健康法とか運動を実践している人ほど、不健康になる、と小池さんは言います。
「こうなりたい」と願うせいで自律神経のうち交感神経が興奮します。健康になりたいと強く欲望するせいで、自律神経が乱れてストレスや緊張が生じます。その緊張感によって人間は走ろうとするのですが、結果として、緊張=ストレスを与えるので、身体には負担になるのです。
本書:P23
そういえば、先日読んだ『極上の孤独』下重暁子 著 幻冬舎新書 | 雨の星 探検記 (amenohoshi.com)の中でも、ジム通いを一生懸命やっている人ほど病気になって早死にしてしまう、といった話が書かれていました(僕のブログでは触れませんでしたが)。なにごともやり過ぎはよくないんだなあ、と思ったものです。
その点、お坊さんは長生きの人が多いらしいです。彼らは図々しく(テリー伊藤のツッコミによれば)、健康食であり、また呼吸法や瞑想法によって「今」を生きることを日々訓練しているのでセロトニンと言う身体によい物質が脳内で作られて結果的に長寿になるのだそうです。
また、最近はやりのアンチエイジングとか若作りをするということは、将来必ず訪れる自分の「死」受け入れることを難しくしてるとも指摘されています。
僕も最近特に健康志向が高まっているので、あまり無理をし過ぎないように、緩やかに穏やかに取り組んでいけたら、と思います。そしてお坊さんのように図々しく(この点は既にクリアしているかも(笑))、ヨガや瞑想を生活に取り入れながら、そして、死を想いながら、日々を新鮮に生きていけたら、なんて思います。
いじめについて
いじめも戦争もそうなのですが、皮肉なことに「そういうことも起きてしまうようね」と考えている社会よりも、「それは絶対になくさなきゃいけない」と考える度合いが強い社会のほうが危ないように見受けます。
本書:P157
この指摘はなるほどなあ、と思いました。いじめに限らず、今の社会は不都合なもの、悪いとされるものにすべてフタをして、無いものとする傾向があるように思います。人間にはマイナスの感情もあれば、ドロドロしたところもある。それを完全に閉じ込めてしまえば、どこかでまたいびつな形で表れてしまう、ということは必然であるのかもしれません。
さきほど触れた「死」の問題にしても、「死」はいけないもので隠さないといけないし、克服されなければいけない、といった空気はあります。前に読んだ下記の本なども思い出しました。
『死とエロスの旅』壇蜜 著 集英社 | 雨の星 探検記 (amenohoshi.com)
死の準備、『もしも一年後、この世にいないとしたら。』、(清水研 著) | 雨の星 探検記 (amenohoshi.com)
そういえば、星新一のショートショートで、深ーい穴が突然地面に開いたので、みんなで寄ってたかって要らないものとかゴミを捨てていったら、最後に捨てたものが空から降ってくる、というお話がありました。押さえつけ、目をつぶっていたものは必ずあとからやってくるのかもしれません。
いきなり悟った人ではないから信用できる
小池さんは、若いころはご自身大変ないじめにあったり、洋服に凝ってすごく収集してこだわりが強かったことや恋愛への執着や失敗などもたくさん繰り返してきたうえで、仏道に入られて少しずつ煩悩や苦しみから解き放たれていったという過去があるそうです。それだけに、言葉に説得力があるし、信用できるなあ、と思わされました。
また、後から知ったことですが、この本が書かれたのは2015年ですが、2019年に小池さんは解脱することができずに還俗(げんぞく:[名](スル)一度出家した者がもとの俗人に戻ること。法師がえり。goo辞書より)した、という記事がありました。↓(ここに書かれている懺悔の音源、1だけ聞きました。まだ残っていました。)
解脱失敗とその懺悔――小池龍之介さんからの電話 | サンガ-samgha-
「魔境に入っていた…」瞑想業界に激震、東大卒僧侶・小池龍之介が解脱失敗を懺悔! 一体どういうことか…徹底解説! (tocana.jp)
僕としては解脱ということが結局何を意味するのかいまいちわかりませんが、無責任ですが「それでもいいじゃないか」、という思いがしています。なにより、こんな悟ったような人でも失敗するんだ!とも思えます。きっと小池さんのことなので、人生をかけてさらに悟りに近づくような努力をされるのだろうし…。たぶんこういった「魔境に入り込む」みたいなことって、多くの宗教家の中に起きることなんだろうなあ、と思いました。カルトと言われるような宗教などの多くは意識的にそういった間違った導きをしている人もいるだろうし、魔境に入ってしまったが故に間違ったメッセージで信者や世間を騒がせてしまうようなこともあるんだろうと思います。そこから抜け出すことだけでもきっと大変なことだろうと思いました。
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本書は難しい用語などもあまりなく、上に書いた内容以外にも、ふっと心が軽くなるような気付きが多くありました。
よかったら一度手に取っていただければ幸いです。
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