『ゲゲゲのゲーテ 水木しげるが選んだ93の「賢者の言葉」』水木しげる著 水木プロダクション[編]双葉新書

本の紹介

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人を食ったような、変わったタイトルの本ですが、古本屋でうっかり買ってしまいました。

水木しげるはご存知のように『ゲゲゲの鬼太郎』などで有名な漫画家ですが、そんな水木さんがゲーテの言葉を人生の糧とし、生きてこられたということは僕は知らずにいました。水木しげる – Wikipedia

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ – Wikipedia

ゲーテは著作を読んだことが無く、手塚治虫の未完の作である『ネオ・ファウスト』を読んだくらいです。あ、『若きウェルテルの悩み』はむかし読んだかなあ。

芸術家であると同時に政治家でもあったのですね。幅広い。

中学生の頃に音楽の授業で聴いて怖かった『魔王』もゲーテの詩なのですね。魔王 (シューベルト) – Wikipedia

この本は2015年12月に出版されていますが、水木さんは同じ年の11月30日に93歳で亡くなっています。

水木さんとゲーテ

水木さんは21歳で召集令状が届き、戦地に赴いたそうですが、それ以前に、18歳の頃に戦争に行けばかならず死ぬとの思いから、様々な書物に救いを求めたといいます。その中にゲーテがあったそうです。

この年(詩一郎注:1940年)、水木は18歳で、ゲーテに限らず、聖書やニーチェ、ショーペンハウエル、カントなどもむさぼるように読んだといいます。それは、いつか招集され、戦場で死ぬかもしれないという恐怖を克服するためでした。自分の意志に関係なく、出征することが否応なく決定されるという理不尽をどうやって容認し、先が読めなくなった自分の人生をどのように意味づけすればいいのか。その答えを見つけるために、水木は真摯に書物と向き合い、最終的にゲーテにたどり着いたのです。

本書:P5

水木さんはゲーテの中でもエッカーマンと言うゲーテの賛美者が書いたゲーテの言葉をまとめた『ゲーテとの対話』という書物に強く惹かれたそうです。『ゲーテとの対話』は戦地にまで持ち込んでいたと書かれていますので、よほど大切に、心のよりどころにされていたのだなあ、と思います。

この本は、水木さんが傍線を引いていた箇所の中から選ばれた93の言葉(水木さんの年齢にちなんで)が掲載されているとともに、水木さんのコメントやインタビュー(夫人の布枝さんも)で構成されています。

ー93歳になったいまも、ゲーテ的に生きていたりしますか?

水木 水木サンの80%はゲーテ的な生き方です。

本書:P22

人間の体は成人だと60~65%、老人では50~55%が水だと言いますから、それよりもだいぶ多い割合がゲーテなのだなあ、と思いました。

水木さんは自分のことを「水木サン」と呼ぶそうです。失礼だけどちょっと可愛らしい(笑)。

ゲーテの言葉

本書では、

第一章 ものを創り出すこと

第二章 働くこと・学ぶこと

第三章 生きることはたいへんです

第四章 死の先にあるもの

という四章のテーマの中でゲーテの言葉が紹介されています。

各章でひとつづつ引用したいと思います。

第一章から

6【才能のない人間とは】

比較的才能のとぼしい連中というのは、

芸術そのものに満足しないものだ。

彼らは、制作中も、作品の完成によって

手に入れたいと望む利益のことばかり、

いつも目の前に思い浮かべている

本書:P40

これに対して自身の漫画家人生を振り返って水木さんのコメント。

後になって思えば、諦めんからよかったんです。書きつづけられたのは、好きだったからで、生きがいをなくし、幸福を忘れているような人には、”成功や栄誉を目的にして、事をおこなうべきではない”と、水木サンはいいたい。

本書:P41

僕も、たとえばこのブログなんかもそうですが、お金儲けのためとかではなく(そのようにはなかなかできないし)、純粋にただ好きなことを書く、ということを続けてみたいな、と思っていたので共感しました。

第二章から

46【何から学ぶか】

そもそも人は、いつも驚嘆するものだけを読むべきだ

本書:P106

これに対して水木さん

もともと私には、オドロキぐせというものがあって、人の三倍オドロクわけです。読むべき本も人の三倍多いから、ますます頭が進むわけです。オドロクというのは、ひとつの才能かもしれんね。

本書:P107

僕も、いろんなことにオドロイていたい!新鮮に世界を見ていたい!と改めて思いました。それこそがこのブログを始めた目的でもあるのですから。

また、なにか物事や出来事や本や映画などがあった時に、それに対して少しでも良いから何か発見し、感動できる人間でいたい、とも思いました。

批判して「くだらない」と決めつけるのは一番簡単だけれど、その中に何か学ぶべきことはないのか、と考え、感じられる人でいたい、とよく思います。

それはとても難しいことではあるのですが。

第三章から

63【他人の意見に揺るがない】

われわれはただ(中略)

黙々と正しい道を歩みつづけ、他人は他人で勝手に歩かせておこう。

それが一番いいことさ

本書:P140

これに対して水木さん。

親父は、水木サンを称して”低能(テイノー)”というんです。だから、低能っていうのは、自分の名前だとばかり思ってました。周りの人間も、水木サンはデキが悪いと思ってるから、馬鹿だというわけですよ。それで、こうしろ、ああしろと、いろいろいうわけですが、水木サンの場合は、相手のいうことはあんまり聞かなかった。他人にどうこういわれて生活形態を変える人が居るでしょ。水木サンにはそれがない。なにをいわれてもそのまま進行する。好きで自信のあることだけをやってきたんです。

いまの成功を考えると、水木サンの頭はものすごくよかったというわけです。人間、なにをいわれても自信をなくしたらダメです。

本書:P141

これを読んで、僕としては子供に、特に息子に対する自分の態度を深く反省せざるを得ないなあ、と思いました。まさか”低能”とは言わないまでも、彼の有りようをそのまま受け入れるような態度を僕はとれていないと(これはよく思うことなんですが)、改めて思わされました。

水木さんのように社会的に成功するかどうかはまた別の問題ですが、その人がその人らしくある、というのは親でも誰でも本当は口出しできることではないんだと思います。

頭ではわかってるんです。でも、僕は息子に対して必要以上に注意してしまったり(ちょっと変わった子ではあるので)、行動を否定するようなことを言ってしまったりするんですよね。

また考えるきっかけをもらえました。

第四章から

89【死について】

私が人生の終焉まで休むことなく活動して、

私の精神が現在の生存の形式では

もはやもちこたえられないときには、

自然はかならず私に別の生存の形式を

与えてくれる筈だ

本書:P180

これに対して水木さん

ゲーテはあの世の存在を信じ、死後もなんらかのカタチで魂は継続すると考えていましたが、私も同感です。

世界のあちこちの「あの世」について調べたことがありますが、考え方はさまざまです。思うに、死後、カタチがなくなるのではなく、カタチが変化するのだと私は思っています。人間の目には見えないカタチに変化する。それが神様なのか妖怪なのかはなんともいえない。ふわふわッとしたものだと想像しています。

本書:P181

僕も死については同じような感覚を抱いています。

ふわふわッとした何かになる日まで、精一杯生きていけたら、と思います。

最後に

この本は、平易な文章でいろんな気付きを与えてくれる良い本だなあ、と思いました。

よかったらお手に取って頂けたら嬉しいです。

また、水木さんが戦場にも持っていたその 『ゲーテとの対話』 も読んでみようと思いました。

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