『されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間』鈴木大介 著 講談社

本の紹介

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今回の本は数日前に書いた↓のブログで読んだ『脳が壊れた』の、奥さんとの出会いからその関係にテーマを絞った本です。

『脳が壊れた』鈴木大介 著 新潮新書 | 雨の星 探検記 (amenohoshi.com)

鈴木さんご自身の脳梗塞~高次脳機能障害との戦いについて詳しく知りたい方は是非『脳が壊れた』や↑のブログを読んでいただきたいのですが、おそらく『されど愛しき~』だけ読んでも十分面白いし、いろいろ考えさせられ、感動的な内容でした。

また、広く発達障害などをはじめとする生きづらさを持つ人たちや、それを取り巻く人々に対するかなり有効な提言を含んでいるとも思います。

本の内容

この本の内容は、タイトルの通り、職場にバイトとして入ってきたお妻様=奥さんとの出会いから、18年にわたっての波乱にとんだ日々を書いたものです。

奥さんはいわゆる「大人の発達障害」で、(出会った当時にはあまり発達障害という概念が社会に浸透していなかったそうですが)ここでは詳しく触れませんが、成育環境等々の影響もあり、相当にメンタルをこじらせた方だったようです。

付き合い始めて同居を始めてからしばらくはなにかあるとすぐにトイレでリストカット~血だらけのトイレを掃除する鈴木さんという流れが毎日のようにあったとか。

毎日会社から帰ったときに奥さんが亡くなっていたらどうしよう、という恐怖心と闘いながら過ごしていた鈴木さん。

奥さんは全く家事をせず部屋が散らかり放題、バイト代をほとんど趣味の漫画などに費やして部屋はさらに散らかっていく…など、非常に大変なパーソナリティの持ち主であります。

また、数年を経て奥さんに特大の悪性脳腫瘍が見つかり手術をしたり、鈴木さん自身が脳梗塞で倒れ後遺症の高次脳機能障害を患って懸命にリハビリに励む姿なども描かれます。

当初は鈴木さん=健常者、奥さん=発達障害でメンタル病んでる人。といった構図で一方的に鈴木さんが奥さんを庇護しているといった感じであったのが、奥さんの病気~鈴木さんの病気~を経て、2人の関係が一方的に支えるだけの関係からお互いに支えあうようになっていく流れが非常に感動的でした。

高次脳機能障害という脳の障害は脳梗塞などで脳の一部が壊死してしまうことでそれまで当たり前にできていたことができなくなったり不自由になったりするそうで、後天的な発達障害ともいえるようなものなのだそうです。

鈴木さんは病を負うことによってこれまで奥さんが苦しんでいた様々なことに自分も苦しむようになったり、「どうしてこんなことができないんだ?」と注意していたようなことが自分もできなくなったりすることによって、奥さんの気持ちが非常にわかるようになったそうです。

そのように実感として気持ちがわかる、特徴がわかることによって、奥さんが家事をできなかった理由もわかってくる。

どうやったら発達障害のある人と協力していけるのか、その方法もわかってくる。

例えば家事を頼むにしても、ざっくりと「料理を作って」というだけでは、物事の手順を考えることが苦手な奥さんにはできないのだそうです。

そうではなくて、「じゃがいもを持ってきて」とか、「醤油を出して」とか、具体的に物事を頼むと非常に協力的にやってくれる。

また、鈴木さんが苦手な細かい単純作業的なことは奥さんの方が得意で集中してやってくれる、といった感じで、少しずつお互いの得意と不得意を見極めながら協力する方法を模索していくのです。

僕の息子のこと

実は、僕の11歳の息子は発達障害と言われていて、この本に書かれている鈴木さんと奥さんの関係には僕と息子との関係にも通じることが非常に多くあり、大いに反省し、また大変参考になると思いました。

息子は育てにくい子供でした。

具体的に言うのは難しいのですが、「普通の子」とはちょっと違う、何か違う、というのが小さい頃の彼の印象です(まあ、今もそうなのですが)。

話がどんどん飛ぶし、一緒に遊んでいても脈絡がなくずっとカオスな感じだし、子供同士でもあまりうまく交われなかったり…。

「子供ってそんなもんだよ」と言われることも多かったですが、だとしたら子育てってみんなこんなに大変なの?と思っていました。

保育園の他の子どもと話した時に、なんて話しやすいんだろう!とびっくりしたことがあります。

こんなに普通に会話が成立するの?と。

のちに発達障害であると言われた時、正直僕ら夫婦はどこかホッとしたというか、やっぱりそうだよね。と思ったものでした。

そんな彼なので、普通と違う、ということがデフォルトであるにも関わらず、一緒に暮らしているとついついそれを忘れてしまうということがあって、「なんでこれができないの?」とか、「普通はこうだよ」とか言ってしまうことがあります。

でもそれは彼にとっては「普通ではない」し、「自分では頑張ってもできないこと」であったりするのです。

その一方で、何かを覚えたり、好きなことに集中する力は人より優れている部分もあったりします。

表現が拙くてうまく伝わらないことも多いですが、人が好きで人にやさしかったり。

僕が考える「普通」の基準で彼を注意したり何かをさせようとすることの残酷さ。

残酷と言うか「無理」なことを「無理やり」やらそうとしている。あるいは期待してしまうことのいびつさ。

僕はそれをもう一度自分に問い直す必要があるし、鈴木さんと奥さんが模索して工夫して一緒に日々を送るように、僕も息子との関りを考え工夫し、変えていく必要があると感じています。

最後に

ちょっとパーソナルなことも書いてしまいましたが、この本は僕にとっては非常に刺さる内容でした。

身の回りにいる人で「この人ちょっと変だな」とか、「扱いづらい人だな」とか思うことってあると思うのですが、そういう人を見るときにその人の生きづらさだとか、その背景にあり得る現実みたいなものを皆がもっと想像できるようなったら、少しずつ世の中良くなるのでは?と、楽観的過ぎますが思いました。

僕はまず、息子との関係を見直すことから。

(前略)読書に、社会にお願いしたい。

まず健常者(というより非当事者)は、脳に問題を抱えた当事者が「やりたくてもできない」ことがあり、その目には見えない機能の欠損と不自由感が大きな苦痛を伴っているのだという理解を大前提にしてほしい。そのうえで、彼らがやれないことを押しつけたり「やれて当たり前」の価値観をふりかざしたりせず、彼らのやれることを共に発見、評価してほしい。

一方で当事者にもお願いしたいことがある。それは、自らができないことと、なぜできないのかを自ら把握し、それがどれほど非当事者には想像し辛いのかを考えること。そのうえでできる限り非当事者にその不自由感がどんなものなのかを伝え、発信する試みを諦めないでほしいということ。当然その際に非当事者は「障害に甘えるな」の言葉を絶対に発さないでほしい。

本書:P213

この本、コミックにもなってるみたいです。↓

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