『百田尚樹の新・相対性理論 人生を変える時間論』百田尚樹 著 新潮社

本の紹介

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百田尚樹による、時間をめぐる考察。

百田尚樹と言うと、聞いただけで「極右!」という反応をする人もいるかもしれませんが、僕は百田尚樹の考え方を極右とは思わないし、概ね賛同する立場です。しかし、これについて書き出すと長くなるのでここでは触れないことにします。

ただ、百田尚樹のストーリーテラーとしての力量は、左も右も真ん中も無く認める方は多いのではないでしょうか。未読の方は是非イメージだけで毛嫌いせずに『永遠のゼロ』や『海賊と呼ばれた男』などなどを読んでいただければその面白さをわかっていただけるのではないかと思います。

本書の内容

この本は小説ではなく、時間をめぐるさまざまな角度からの考察をつづった本です。

僕も最近、生きることや死ぬこと、自分の人生の残り時間の長さなどを考えることがあるので、大変面白く読みました。

なぜ時間はだんだん早くなるのか

よく言われることですが、歳をとるごとに人間は時間の経つのが早く感じられるという現象があります。

僕も実際そんなふうに感じます。

これには様々な人によって様々な説明が試みられていますが、百田さんの説明はこうです。

私はこの謎を考え、ある仮説に辿り着きました。「過去の時間」の体感は、「感動と記憶」にあるのではないかというものです。

人間は人生の中で感動したり驚いたりすると、その出来事が強く心に残ります。喜んだり泣いたり怒ったりしても同様です。人生を振り返った時、そうした出来事が多かった時代は、「長い時間」に感じるのではないかというものです。逆に、そうした出来事が少なかった時代は「短い時間」に感じるのではないでしょうか。つまり「時間の濃淡」に差が出るのです。

本書:P39

だから、逆に40代になっても50代になっても何歳になっても、驚きや新鮮な喜びに満ちた日々や出来事をこちらから積極的に作っていく、ということをすれば人生をより豊かに過ごすことができるのはないか?というのが百田さんの主張です。

僕もこの考えには賛成です。

残りの人生、少しでも心が喜ぶような挑戦を(たとえ一歩でも、)していけたらいいな、と思っています。

人類の全ての発明は時間を増やすため

この本の中で百田さんは長生きするということを以下のように言っています。

・ただただ物理的に長く生きたからといってそれは長生きとは言えない。

・充実した時間を多く持つことこそが長生きである。

この充実した時間を多く確保するために、人類は多くの発明をしてきました。

古代であれば、火を起こすための道具、水汲みのための壺、動物をしとめるための槍や弓などが発明されました。

その結果、出来た時間を自分たちの充実した時間に充てられるようになりました。

また、その発明の裏には死への恐怖があり、少しでも死から逃れ、死ぬまでの限られた時間の中で自由な時間を作るために発明をしたのだろう、とも書かれていました。

近代、現代の人間も少しでも楽しい時間を過ごすために様々な発明を試みてきました。

電化製品や携帯電話、パソコンや鉄道や飛行機などの交通手段などなどにより、古代の人達と比べたら同じ時間の中で自分の時間を驚くほどたくさん持てるようになってきました。

また、医療の進歩や衛生状態、栄養状態の改善も相まって物理的な人生そのものの時間も長くなっています。

その結果得た時間をどのように使うか

ただ、そのようにして浮いた時間を本当に有意義に使うのはまた別の難しい問題です。

多くの人は、テレビやインターネットに時間を使うことに躍起になっています。

(というよりも、なんとなく時間を使わされている、とった方が良さそうです。僕自身もハッと気づいて恐ろしくなることがあります。)

でもその娯楽は本当に人生を豊かにしているのか…。

テレビがいけないわけではなく、ネットの動画がいけないわけではなく、本や漫画がいけないのではなく、ただ流されるように惰性でその時間を過ごすのなら、それは無為に時間が流れているということなのだろうな、と思いました。

せっかく手に入れた自由な時間(それは個人が頑張っただけではなく、古代から今につながる先祖の努力の結晶なのです)をもっと有益に使うために、ちょっと立ち止まって考えなおす必要がありそうだな、と思います。

テレビやインターネットやスマホのゲームなどは、実に巧妙に我々の時間を奪っていきます。

スティーブジョブズなど今のスマホやネット社会をけん引した人々が自分たちの子供には決してそうした機器を与えなかったというのは有名な話です。それらが人間にとって有害だとわかっていたからです。

僕にとって、お酒もまた、人生の時間を無為に呑み込んでいくものでした。お酒を飲んでいた時間は僕にとってはぬるま湯のように心地よかったのですが、それは僕の人生にとっては必要なかったと今となっては思います。

まだお酒をやめて8ヶ月くらいなのですが、これからもお酒は飲まないつもりです。

そして、日々やるべきことをやりたいと思っています。日々、それが出来ているかと聞かれると微妙ですが、少なくとも酔ってない頭でそれを考えるためのスタートラインに立った、という感じはしています。

知の継承と人間の心

人類は、様々な発明をすることで人生の時間を長くしてきました。

一方で数えきれないほどの争いを繰り返した挙句に原爆のような兵器も作り出し、広島・長崎で使用するまでになりました。広島・長崎以来人類は戦争の中で核兵器を使用していませんが、それは人類がこの教訓によって賢くなったとも思われますが、先のことはわかりません。核兵器を使うというところまではいかないにしても、戦争は世界中から絶えることがありません。

人類はなぜ過去に学べないのか。

百田さんは、人類は知識を次の世代に継承することはできるが、「心の成長」は次の世代に渡すことはできないからだ、と言います。

知識はいくら吸収できても、心の成長はどんな人間もゼロからスタートしなければならないのです。人がその短い生涯の間に、欲望や嫉妬や怒りをコントロールするのは無理なのかも知れません。だから過去に夥しい失敗を見て、十分すぎるほどの教訓を学んでいるにもかかわらず、戦争を繰り返すのです。

本書:P128

この指摘は、この本の中で一番心に響きました。

最後に

この本を読んで、時間の大切さというものを改めて感じることが出来ました。また、その時間を輝かせ、意味あるものにすること、そして少しでも心を成長させていくことが人生の目的なのではないかな、とも思いました。

これからの人生に活かしていきたいな、と思っています。

ここに書かなかった内容も含めて示唆に富んだとても興味深い内容でしたので、よかったら手に取って頂けたらと思います。

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